地域No.1のリフォーム専門店へ

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「建築リフォームは本当のプロじゃないと難しい仕事。だからこそ地元の人たちのために必要なモノなんです」

栃木県栃木市大平町で新しくリフォーム事業を立ち上げた建築会社「株式会社シンアイ」の川田俊介代表取締役(39)と大出伸幸専務取締役(38)。先細りが懸念される大工の職を、個人ではなく組織として継続させようと、このほど二人の地元でもある栃木市にリフォーム専門店「けんなんリフォーム」を立ち上げた。取材時、まさに建設途中だった新事務所で仕事にかける想いを聞いた。

川田代表(右)と大出専務(左)。
中央は大出専務の〝師匠〟藤倉さん

 

下積みを経て独立

――大工の職に就いたのはいつですか?
大出専務(以下、敬称略)「僕は16歳から22年やっています。建設業をかじって、大工が建設業の頭だということに気づきました。それで大工がカッコイイなと思いました」
川田代表(以下、敬称略)「それは僕も思いました。昔外壁屋をやっていたのですが、それは大工さんが仕事を取ってきた上で成り立っている。どうせやるなら、頭のほうで指示する側でいたいなという気持ちがありました」

――大工の仕事って大変だけど、面白そうですね。
大出「お客さんに『ありがとう』と直接言われるのがうれしいですね。下請けの工事現場だと『誰のために仕事をしているんだろう』というのがあるので」
川田「下請けだと作業員的な感じになってしまうんですよね。僕は21歳ぐらいからこの仕事を始めました。最初はリフォームをやりつつ、その後岩舟の大工さんのところに行って」

――職人さんの下について。
川田「そうですね。親方の下で修業をして」
大出「僕は、今手伝っていただいている藤倉茂治さん(67)に二十歳ぐらいから教わって、その後独立して」

――師匠。
大出「師匠ですね」
川田「今はこっちの仕事でずっと来てくれています」

――自分たちがまだ技術のない期間は大変ですよね。
大出「大変ですね。精神的にきつかった」
川田「でも、自分たちで言うのもなんですが、二人ともまぁまぁ」

――センスがあった。
川田「大工は独り立ちするまでに普通、5年か10年ぐらいかかると言われているのですが、僕が独立したのは2年ちょっとぐらいです。親方のもとに行き始めて2年半。そこで、知り合いにたまたま新築を頼まれたんです。まだ23か24歳ぐらいで。そのときに『これをきっかけにやるしかないでしょ』と。そのタイミングで独立しました」

最強タッグ結成と大切にしている横のつながり

――川田さんに直接、新築を頼んできた。
川田「父親の電気屋のお客さんだったのですが、そのときに大出に声を掛けて。本当に若かった。二人とも角が取れていなかったですね」
大出「俗に言う『ヤンチャしてた』時期もありました(笑)。今はその恩返しじゃないけど、地元やお客さんに還元したい気持ちが強いですね」

――初めて二人で一棟建てた。
川田「お客さんもよく頼んでくれたなと思いました」

――ターニングポイントですね。
大出「僕は10年ぐらいハウスメーカーの下請けをやっていたのですが、徐々に地元の仕事が増えてきて。最初は本当に一部屋床を張ってとか、そういうところから積み重ねてという感じですね」
川田「僕も最初の頃少し、下請けとか代行とかを1〜2年やったりしましたが、その他は苦しみながらもなんとか。その後からはずっと直受けだけですね。ここ5年ぐらいは切れずにずっと来るようになったので」

――人づての紹介で。
大出「遊んでいる間に、友達みんなが営業マンになってくれた感じがします(笑)」
川田「地元で(実行委員会初代会長を務めた)とちぎ盆祭りとか、蔵の街花火大会とか、イベントをやっている仲間内で仕事を回しているのが大きいですね」

大出「1回やったお客さんがどんどんお客さんを呼んでくれて。今のところ、本当の営業活動はしていないですね」
川田「今はしばらく先まで仕事が入っていて、逆にどうしようかみたいな」

大出「現場の仕事をやるときに、それをしっかりやることが営業なのかもしれないですね。それの積み重ね」
川田「地域のイベントも自然と営業になっているんですよね。あれで結局人がつながって。仲間で酒を飲んで馬鹿話をしているけど、それも結局営業にはなっています」
大出「僕は実家が米屋なので、秋になると既存のお客さんに新米を届けに行くんです。欲しい方はぜひって。そこからまた仕事に繋がったり」

リフォームは〝本当のプロ〟にしかできない仕事

――けんなんリフォームを立ち上げようと思ったきっかけは?
大出「なんとなく2人で考えていたことを、やらなければいけないと思ったタイミングが一緒だったんです」
川田「仲が良かったというのもあるし、あとは地元のお客さんが結構困っているんですよね。リフォームしたくてもどこに頼めばいいのか分からないって」

――緊急性が高くないし、なんとなく「直したいんだよな」という需要も。
川田「大手にはできない仕事だと思うんです。やっていると分かりますが、本当の建築のプロが現場に行かないと分からない」
大出「新築はシステム化できるのですが、リフォームは1件1件現場が違うのでシステム化できない。経験がないと中身が分からないから」
川田「リフォームは建物の年数や環境、お客さんの要望などでやり方が変わってきます。本当にいろいろな場面に出くわすので、技術と経験がものをいうんですよね」

――仕事で思い出深いエピソードは?
大出「子どもの同級生の親御さんが鏡もちスタイルの家を総二階にするという大がかりなリフォームをするときに、ハウスメーカーではできないという話で困っていたんです。その工事を請け負って無事に終わったときに『(息子の)一颯君のパパってすごいね』と言われたのが1番うれしかったですね。大工冥利に尽きます」
川田「(栃木市大平のそば割烹)『嵯峨野』さんのリフォームは増築と中の改装といろいろあって、お店を休む期間をどれだけ短くするかを考慮しつつ、合体させる、高さを合わせるなどいろいろなことを考えながらの難しい作業でかなり勉強になりました。工程を組んでお客さんと細かく打ち合わせして、『この期間だけなんとか休んでください』とか調整しつつ」

大出「知っている人なので、やっていて余計にうれしいですね。大げさですが、僕は〝この人のために〟と思わなければやらなくてもいいのかなと。フィーリングが合わないとうまくいかないな、というのは経験で分かりますよね。お客さんと一緒につくっていくのが1番の醍醐味で、想像以上の提案をするのが我々の一つの行動理念。家づくりはお客さんとの共同作業だと思っているので、やりとりを重ねてより良いものをつくっていくのが理想の形ですね」

 

 

若くして独立し、自分だけで仕事をやり抜いてきたお二人の話には引き込まれるものがあった。それは仕事への確固たる自信と地元への愛情に溢れていたからだろう

補い合う〝最強の二人〟

――お二人はお若いですが、自信も十分。
大出「自信は積み重ねですね。成功の連続が自信になるのではないかと。今から10年ぐらいが1番良い頃ではないですかね。体力は落ちていっても、経験と知識が増えてくれば」
川田「昔から個人でやっている二代目三代目の大工さんには負けない自信はあります。技術もそうだし、スピードも能力も。二人になったことで〝×2〟になって余計に強くなったと思います」

――お互いに「ここは敵わないな」と思うところは?
大出「俊介さんは勢いが本当にすごいなと。強気なポジティブさは自分にないものを感じます。あとは、人を集める力。僕は慎重派なのですが、祭りのときとか仕事でもいつも『なんとかなるよ』と勇気をもらいます」
川田「僕はそんな感じなのですが、大出は安心感をくれます。例えば、打ち合わせのときに細かい図面取りの物を持ってきてくれたり、適当そうに見えて案外しっかりしています。僕もたまに仕事の事を考えて『大丈夫かな』と弱気になったり不安になって相談すると、的確なアドバイスをくれる。最後のひと押しをしてくれます」

大出「親父とお袋みたいな」
川田「運命共同体的な。これでどちらかが倒れたら駄目になってしまいますね。両方どんどんうまく伸びていかないと。これからは、建物なども会社として活用していけるものを増やしていきたいです。資産を増やして、後を継ぐ者が継ぎやすいように。若い従業員も増やして、藤倉親方が元気なうちに一人でも育てあげてもらって」

――これから楽しみですね。
川田「目標は、地域で1番のリフォーム会社になること。どこに頼もうかといったときに『とりあえず、あそこに頼んでおけば安心』と思ってもらえる会社を目指します」

取材中も、地元企業の経営者同士の横のつながりを感じるエピソードを聞かせてくれた。カインズモール大平北側、県道11号線沿いに位置するけんなんリフォームの新事務所の建物には、大分唐揚げ専門店「とりあん」の大平店が入る。ショッピングセンターのそばで交通量の多い街道沿いという立地、さらに飲食店と協力することで人々の記憶に残りやすくなる。「地元のために」という想いで立ち上げたリフォーム事業は地域の人たちがいざというときに頼れる強い味方になるだろう。なお、同店は栃木市2号店で、2022年1月20日オープン予定。

Miwa

元とちぎ朝日(2020.6月廃刊)スポーツ担当記者。東京新聞宇都宮支局、真岡新聞、小山まるごと新聞、栃木スポーツ応援マガジンSUPPORTERS (栃木SC担当)etcでライター&FC CASAアカデミー・スクールカメラマン。
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